磯野梨影 Shop Bag Clock展

アシストオン原宿店  2006年9月1日 - 9月21日(終了しました)

"innocent"について
磯野梨影

今回、新しい製品のブランドを担当することになり、ブランド名を「innocent」としました。

シンプルで、使い手を選ばず、飽きのこないモノ。
ありそうでなかった、ユニークな使い方ができるモノ。
普通に見えるのに、なんだか面白い「顔つき」をしてるモノ。

そんな毎日のくらしをちょっと面白くする身近なモノづくりを心がけて、これから展開していこうと思います。

磯野梨影
Shop Bag Clock展について

「買い物ぶくろの形をした置き時計?」

リビング、キッチン、ベッドルームと、わたしたちの生活の中で、気軽に持ち運んでつかえる置き時計をかんがえたら、こんなデザインになりました。

見やすい文字盤をもち、寝過ごし防止のスヌーズ機能を搭載、ベッドサイドで使用することを考えて、コチコチ音の小さなムーブメントを使用しています。さまざまな場所で使うこと、持ち運びやすさを考えたら、こんなにスマートで、まるで「買い物バッグ」のようなカタチの置き時計ができあがりました。

このアイテムをデザインしたのは磯野梨影(いそのりえ)。ソニーのインハウスデザイナーとして、デザイン史に残る名作「Beans Walkman」を担当。その後、ロンドンのデザイン事務所に勤務された後、個人事務所を設立し活躍を続けられているプロダクトデザイナー。AssistOn inFocusのマイ・セカンド・まくら・プロジェクト展にもご参加いただきました。

この「Shop Bag Clock」は磯野さんがブランドのプロデュースとデザインを手がける「innocent」の一員。「Shop Bag Clock」を第一弾として、今後いろいろなアイテムが登場します。そのスタートを記念して、磯野さんの活動に注目したAssistOn inFocusを企画しました。


今回、アシストオン原宿店で開催する展示会では、一般には初お目見えとなる「Shop Bag Clock」の展示販売をはじめ、磯野梨影のこれまでの作品の実物も展示。

ソニー「ウォークマン」シリーズの中で、もっともユニークなデザインとして知られ、これまでのソニー製品のイメージであった「小型で高性能」という概念を打ち破り、その次の年に発売される「iMac」のデザインにも影響を及ぼしたといわれるSONY「Beans Walkman」。腕時計メーカーSwatch社の電話機部門からリリースされた「Swatch Twinphone」。この製品は創設時のアシストオンが日本国内ではじめて販売を行なった製品で、おぼえておられるお客様も多いでしょう。この製品も磯野さんがデザインされたプロダクトでした。

あわせて「Beans Walkman」の原型であり、ヨーロッパのみで限定販売され、プロダクトデザイン史では有名ながらも一般では見ることが極めてむずかしい「YPPY Walkman」を、プロトタイプをはじめ4種類を展示します。


今回の展示会で、磯野梨影のデザインセンスをぜひ皆さん体験してください

inFocus vol.013
「買い物ぶくろの形をした置き時計?」
磯野梨影 Shop Bag Clock展

期間:2006年9月1日から9月21日まで
  (毎週水曜日はお休み)
場所:アシストオン原宿店
主催:AssistOn Pear Design Studio
協賛:株式会社元林 

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通信販売でも
お求めいただけます

今回の展示会でご紹介するは「Shop Bag Clock」は通信販売でもお求めいただけます。
くわしい情報とご注文はこちらをご覧ください。

innocent "Shop Bag Clock"

Pear Design Studio
訪問記























SONY "Beans Walkman"

1995年発売。有機的なラインをもった、その名の通り「豆」のような形をしたウォークマン。これまでの「薄くて高性能」というソニー製品らしさ、ウォークマンらしさを払拭。iMacを先取りした半透明の素材を使用し、蓄光性を備えるなど、ユーザーに「見せて歩きたい」と思わせる存在感をもつ。そのカジュアルで親しみやすいデザインとカラフルなバリエーションをもち、ソニープラザなどでも販売され、大ヒットを記録した。













Swatch "Twinphone"

1997年、スイスの腕時計メーカーとして知られるSwatch社の電話機部門、Swatch Telecomから発売された電話機。電話機の本体部分に受話器として使用できる機能性を装備しており、3者通話を可能にするという「おしゃべりする楽しさ」を実現している。日本では公式に販売されることは無かったが、創設期のAssistOnが並行輸入で販売し、大きな注目をあびた。



































































































2006年8月24日、プロダクトデザイナーであるPear Design Studioの磯野梨影さんをたずねました。

磯野梨影さんは1995年までソニー株式会社のインハウスデザイナーとして活躍、ウォークマンのシリーズの中でも特に特徴的なデザインとして知られる「Beans Walkman」などを手がけられました。また、退職後にイギリス・ロンドンに渡られ、ファッショナブルな腕時計で有名なSwatchから発売され斬新なデザインで話題になった電話機、「Twinphone」をデザインされました。その後帰国され、出産と育児のため3年間はデザイナーを休業されましたが、2000年には個人事務所である「Pear Design Studio」を立ち上げ、現在は子育てをしながらデザイナーとして活躍されてます。

「Pear Design Studio」は横浜の郊外の住宅地にあります。最寄りの駅に降り立った私を、磯野さんは赤い車で朝の日差しのように颯爽と登場され、出迎えていただきました。しばらくして到着した磯野さんの仕事場兼ご自宅は、白い壁と緑まぶしい庭がとても印象的でした。

今回、発売になる磯野さんがデザインされた「Shop Bag Clock」。この製品は、紳士用品や喫煙具のメーカーである、株式会社元林が、創業100周年記念として立ち上げたブランド「innocent」から発売になる、第一弾製品。この「innocent」の基本コンセプトや製品のあり方、そしてデザインまでを磯野さんがすべて手がけられました。

この「Shop Bag Clock」の発売にあわせてアシストオンで開催させていただく展示会のために、磯野さんのこれまでの仕事について、またどのようなことを考えてデザインしているのかを取材させていただきました。

SONY「Beans Walkman」の誕生

「Beans Walkman」は半透明の素材をつかい、有機的なラインをもった、その名の通り「豆」のような形をしたウォークマンです。

このプロジェクトが始まる前、既にソニーでは、ヨーロッパの若者をターゲットとした「YPPY Walkman」を発売していました。この製品はウォークマンのボディーを布でくるんだり、パンチングメタルを使ったりと、今までのソニーのデザインイメージとは違う、斬新なデザインでした。それで日本国内でも、この「YPPY Walkman」のようなモデルを女子高生をターゲットにしてつくろうということになったのです。そのリサーチとして、女子高生の気分を知らなければということで、渋谷の街をウロウロと徘徊したりしましたよ。

「Beans Walkman」は実際に1995年に発売開始されましたが、デザインができあがるまでには、自分の中での試行錯誤がありました。当時のソニーは、デザインの考え方として「小さくて高機能」であることを目指していました。それで私自身も、たとえば量感のあるモノや、大きくデザインすることに罪悪感があったんですね。ソニーという会社にとって、その本流から外れない「おりこうなデザイン」をしなくてはならないと思い込んでいたんです。

そんなことで行き詰まりを感じていたとき、先輩から「ウォークマンをデザインするのだからといって、小さく作らなくてもいいんじゃない?」という言葉をかけてくれました。この言葉に背中を押され、急に気持ちがのびのびと自由になったんですね。そうか、このプロジェクトでは、これまでのウォークマンのような精密な音響機器をつくるのではなく、むしろ「雑貨」をつくればいいんだと。そうしたら、テープを回転させるパーツがまるで「目」のように見えてきて、「ひらけ!ポンキッキ」のガチャピンみたいにも思えてきました。そこから俄然、この新しいウォークマンをデザインすることが楽しくなってきたんです。

Swatch Twinphone

このプロジェクトのあとソニーを退社し、同じデザインセンターに勤務していた夫の赴任先であるロンドンへ渡りました。しばらくして、腕時計で有名なSwatch社の電話機部門のデザインを当時担当していた「PSD associates」という会社がデザイナーを探しているという話がありました。そこで面接を受けたのですが、実は英語はそんなにできなかったんです。でも、言っていることはだいたい分かるし、デザイナーだから絵を描けば伝わるから何とかなるよと言われ、このデザイン事務所で働くことになりました。ラッキーだったんですね。

ここでの最初の仕事は、当時すでに発売されていた「Cordless Phone」のカラーバリエーションを広げることでした。しかしそれだけに留まらず、「Twinphone」の後継種を三者通話という機能性を保ちながらも、もっとSwatchらしい電話機にするために、新たにデザインすることになりました。そこで「PSD associates」のスタッフでスケッチを描き、Swatch Telecomに提案しました。その中から、私のスケッチが採用されたんです。Swatch Telecomとしても今までの「Twinphone」とは全く違ったアイデアを望んでいたようで、きっと「Beans」のようなデザインセンスが欲しかったのではないかと思います。

デザインアイデアが湧くとき

自分でも何故が分からないのですが、デザイン依頼をいただく最初の打合せをしているときに、頭の中に「こんなものなのではないか」というデザインイメージが画像になって浮かんでくることがよくあります。

そこで、「これなのかな?」と出てきたイメージを実際に自分で線を描いてみて、様々な角度から検証しながら立体にしていきます。さまざまな経過をたどり、紆余曲折の回り道をしたとしても、それが最終的な製品のカタチになるとき、最終的にはそのイメージにほとんどのものが戻ってきます。一番最初に、直感的に頭に浮かんだイメージに、不思議ときちんと戻ってくるんです。そんなときデザイナーという仕事は面白い仕事だな、と思うんです。

デザインは「顔つき」で決まる

いつもデザインするときに考えるのは、その製品の「顔つき」なんです。人間の顔にも、その人それぞれの性格がでるでしょう。「いいデザイン」というと、少し気取ったような、格好を付けたものに感じることがあります。でも、私はそういう気取っただけものを欲しいとは思わないんですね。自分がデザインするモノは、取り澄ましたものにしたくないし、変な顔にしたくないんです。

以前は私も、スマートなデザイン、格好良いデザインにばかり憧れていしました。でも、自分が本当に欲しいもの、身の回りに置きたいものを考えると、それだけではないと気がつきました。そして「Beans Walkman」を担当しているときに、「デザインは顔つきだ」と確信したんです。

これから

今回、新しい製品のブランドを担当することになり、ブランド名を「innocent(イノセント)」としました。

シンプルで、使い手を選ばず、飽きのこないモノ。
ありそうでなかった、ユニークな使い方ができるモノ。
普通に見えるのに、なんだか面白い「顔つき」をしてるモノ。

そんな毎日のくらしをちょっと面白くする身近なモノづくりを心がけて、これから展開していこうと思います。

インタビューを終えて

磯野さんはこれまで海外生活や出産、独立など取り巻く環境が変わっても、常に今の自分と向き合い、「自分じゃなきゃ、できないものをつくっていきたい」と歩み続けられてきました。今回のインタビューを通して、私自身がこれまで磯野さんがデザインした製品から感じていた、親しみやすさや、相棒のような存在感の、その理由がやっと分かりました。ひとつひとつ「顔つき」として人格を吹き込んでいたからなのだと。これからも様々な「顔」をもった新しい製品たちが、磯野梨影さんから生み出されてくるのか、新しいブランド「innocent」からは第一弾製品である「Shop Bag Clock」が発売になったばかりですが、もうその次がどんなモノになるのか、本当に楽しみになってきました。

9月1日から21日までの展示会では、新製品「Shop Bag Clock」の販売とともに、今回のインタビューにも出てきたソニーの「Beans Walkman」や「Swatch Twinpone」を展示いたします。特に「Swatch Twinpone」は並行輸入品としてAssistOnの創設時に販売をしていた、ということで良くご存じの方も多いかと思います。この機会にぜひ、磯野梨影さんのデザインされた、それぞれの「顔」を見にいらして下さい。


インタビュー 斉藤有紀(AssistOn)2006.8.29

掲載した写真、およびインタビューテキストはAssistOnが独自に撮影、製作したもの、もしくはPear Design Studioから特別に許可を取得し掲載しています。無断転載を禁じます。

about inFocus

単に見た目のデザインだけではなく、その品質や素材、使い勝手、そしてそれらを作りだした人々の「アイデア」についてもきちんとご紹介していくこと。 商品の販売だけではなく、様々な企画を通して、お客様や商品の流通や作り手のみなさんと一緒に、新しい「モノ」の有り方を考えていくこと。 それが私たちAssistOnの願いであり、また使命であると考えています。

inFocus は、展示会やwebによる情報発信を通じ、いま、まさに旬のさまざまなデザインにAssistOn独自の視点でフォーカスするシリーズです。どうぞご期待ください。