「YAMASAKI DESIGN WORKS ++ 輪島キリモト」

アシストオン原宿店  2007年7月13日 - 8月2日(終了しました)

ものをつくること

漆をつかうこと

山崎宏 ++ 桐本泰一

私たちが普段使い慣れている道具でも、実は使いづらいと感じているものは多いですよね。みんなが無意識にあきらめているようなものを、僕はデザインと素材の力で解決し、新しい扉を開きたいんです。(山崎宏)


輪島塗りというと、高級贈答品や装飾品であるとイメージがあると思います。でも私は、普通の人が毎日の生活の中で使う道具をつくっていきたい。いつも使う漆器、普段の漆の道具たちをつくりたい。だから、今の空気を日々感じているデザイナーたちと一緒になって、モノづくりに取り組んでいます。(桐本泰一)

普段使いの道具をつくりたい

2005年の発売以来、アシストオンの人気商品としてみなさんにご利用いただいている「キリモト Pen Tray」。

すずり石を模したかのような古風な印象と、シャープでモダンなイメージが交差する不思議なカタチをしたこのペントレー。持ってみると驚くほど軽いこの素材には天然の「ひのきあすなろ」が使われ、そこに置いたペンやナイフなどの文具を引き立たせてくれる、木目の美しさが特長です。

ペントレーですから万年筆やペン、さらにはナイフなど、金属やプラスチックなど様々な素材でつくられたものが置かれ、それがこのペントレー自体を傷つけてしまうことになります。これを守っているのがこのペントレーに施された漆塗り(うるしぬり)。

特にこのペントレーでは「蒔地技法」という、輪島産の珪藻土を焼成粉末加工した「地の粉」と漆を掛け合わせて塗り込むという手法が使われています。ざらついた手触りが特徴的なこの漆塗りの技法は、漆と馴染みのよい地の粉が乾くと、なんと、ガラス繊維に近い強度が得られるほど。素材の風合いはそのままに、このトレーとトレーに置かれたものを優しく包み込み、長く愛着をもって使えるものにしてくれます。


「漆塗り」というと多くの方はピカピカ光る高級工芸品を想像されるかもしれません。しかし高度経済成長以前の日本では、丈夫な塗膜で住宅の柱や壁といった建材、そして食卓用の器など、大切な日常品を守ってくれる塗料として、私たち日本人の生活とともにありました。漆塗りとは、素地となる木材を保護しながら、触感の柔らかさをそのまま生かし、美しい色合いを添えてくれる。私たちの身近にある当たり前のものでした。

今回のAssistOn inFocusでは、石川県輪島市の伝統産業である漆塗りに、あたらしいデザインの息吹を吹き込み、若い日本のデザイナーとコラボレートをしている輪島キリモトの桐本泰一さんと、デザイナー山崎宏の共同製作による製品に焦点をあてます。

inFocus vol.020
「YAMASAKI DESIGN WORKS
 ++ 輪島キリモト」

期間:2007年7月13日から8月2日まで(終了しました)
  (毎週水曜日はお休み)
場所:アシストオン原宿店
主催:AssistOn YAMASAKI DESIGN WORKS 輪島キリモト


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輪島キリモトの製品は通信販売でもお求めいただけます

全アイテムの中から、4製品はアシストオンの通信販売でもご購入いただけます

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YamasakiDesignWorks
山崎宏さんインタビュー












































輪島キリモトと山崎宏の製作によるキリモト "Pen Tray"







こちらも同じシリーズのキリモト "Card Tray"














ペントレイのデザインスケッチ







ペントレイが完成するまでの試作品 一番右側が最初の試作で、左側は最終製品となったもの








山崎宏のオリジナルブランドYMSKにもキリモトとの合作が誕生 人気の「YMSKティッシュボックス」の漆バージョン







漆と木地の見本






最新作となる「キリモト うるしとガラスの一輪挿し」






2007年7月4日、アシストオンでも革の名刺&メモホルダーやステンレスのティッシュボックスなど人気のある製品をつくられているヤマサキデザインワークス。その代表で、プロダクトデザイナーの山崎宏さんをおたずねしました。


山崎さんは、1991年の20歳のときに大手の文房具や事務用品メーカであるコクヨ株式会社の商品開発部に入社され、9年間に渡り、デザインを含む製品開発を担当されていました。2000年の退職後はマウンテンマウンテンというユニットとして活動し、2005年にヤマサキデザインワークスを設立されました。現在は企業から依頼された製品のデザインをはじめ、YMSKをブランド名としたご自身でプロデュースした製品をつくられています。


山崎さんの仕事場は老舗メーカーや問屋の並ぶ、浅草橋の駅から5分ほどで、屋形船や小料理屋のある神田川を超えた先にあります。これまでアシストオンでは山崎さんがデザインされた製品を扱ってきましたが、あらためて、デザインや製品作りについて、また、輪島キリモトと一緒に仕事をすることになった経緯などをうかがいました。

商品開発と独立まで

コクヨに務めていたころは、商品開発部という部署で、製品をデザインするというよりも、担当となったアイテムの既存製品から新しい製品まで、デザインをはじめ、その製品の方向性から発売までを一貫してディレクション(指揮)していく、という仕事を主に行っていました。取扱説明書も自分で書いたり、生産工場へ行ったりと、製品が販売されるまでの全ての工程に関わってきました。


外部のデザイナーと一緒に仕事をする機会が多くありましたが、工場での生産工程を確認すると、修正や微調整があったり、デザイン自体に根本的な見直しが必要だったり、時間が掛かってしまうことが度々でした。だったら、始めから自分でデザインをした方が効率が良いな、と思って、自分でデザインもするようになりました。会社としては製品をディレクションをして欲しかったようなので、仕事のペースが落ちないようにしながら、製品管理とデザインもおこなっていきました。このときのことが、今の製品づくりにものすごく役立っていると思います。

コクヨにいるときは、パソコン周辺のものから、ファイルに、モバイルバッグなど、さまざまの製品を手掛けてきました。特にモバイルバッグは国内の大手の家電メーカーのOEMとしてかなり手掛け、どんどんバッグの仕事が増えてきたのです。しかしバッグの専門メーカーもパソコンのことに詳しくなってくるだろうし、それにバッグではなくて、もっと自分の力が出せる場所があるんじゃないか。そんな思いもあってフリーのデザイナーとして独立しました。


実はアシストオンには2000年1月の開店日に足を運んでいるんです。その頃はまだコクヨで僕がパソコン周辺関連の製品を担当しているときでしたので、デジタル製品にも強いというセレクトショップが原宿にオープンすると聞いていましたので。今考えると不思議な縁ですね。

山崎宏のデザイン

僕はいつも自分が生活の中で困っていることを、なぜそうなるのかを検証したり、どうしたらその解決ができるのか、そんな実験ばかりしています。そんな風に考えるようになったのは、1998年に池袋のセゾン美術館で開催された「柳宗理デザイン展」で、調理器具のボールを見たときが、きっかけになっているかもしれません。


それまでは、半円形をしたキッチンで使うボールなんて、既にデザインや形も完成されているもので、もう手を加えるところはない、と思い込んでいました。でも、柳さんがデザインした美しいボールのたたずまいを目にして「まだ、デザインにやれることがあったんだ」と思ったのです。これで完成と思ってあきらめていたものでも、まだやることがある。デザイナーとして、とても衝撃を受けました。

ティッシュボックスのこと

ティッシュボックスをデザインしたときも、あの主張の強いパッケージを何とかしたいと以前から思っていました。ティッシュを買って家に持ち帰ってから、家の雰囲気に合わなかったり、自分の好みにしたいと思っている人がいる思うんですね。最近では、グラフィックデザイナーなどを起用して、パッケージにイラストや柄が描かれているものもありますが、僕はそれだけではなくて、まだ何か解決する方法があるのではないか、と考えました。


それで市販のボックスを覆うケースをつくってみたものの、これで本当に正解なの?何か忘れていることがあるのではないか?もっと他に根本的なところで困っていたり、気になっていることがあるのではないか、ということをずっと考えていていました。そうして、ティッシュボックスは、絶対に正面からひらひらと紙がでていなくてはいけないのかな、と思ったわけです。


もちろん、紙が次から次へ繰り出していく仕組みのためには、真ん中から出てこなければいけないのは分かっているんですが、本当に真ん中からでないといけないのか、変えたらいけないのだろうか、と。


そこで現在の製品となっているカタチを思いつきました。こうすればスマートに取り出せるし、いつも正面向いていたティッシュも横向きや立てて置くことができる。これまでのティッシュケースの問題点が解決できるカタチにたどり着くことができました。

輪島キリモト 桐本泰一との出会い

2004年に東京都三鷹市で開かれた輪島キリモトの個展があって、漆器を実際に使って食事をするというイベントに参加しました。そこで、はじめて桐本泰一さんにお会いしました。その後で、桐本さんが「いつものうるし」という本を作られるということで、その発売に合わせて製品をつくりませんか、とお話しをいただきました。


それでまず、石川県にある輪島キリモトさんの工房を訪ねることにしました。漆製品は出来上がるまでには、木地作りにはじまり、布や和紙を張っての下地作り、漆を塗ったり、描いたり、いくつもの工程があって、多くの職人さんの手によって仕上げられていくんですが、その職人さんたちの技術がものすごいんです。


さらにプロデューサーである桐本さんもそれぞれの職人さんの技量を分かっていて、その技術が最高のかたちで発揮されるような仕事をされていました。

工房では最初に名刺入れの木地を作っているところも見させてもらったんですが、漆を塗って仕上がったものはしっかりとした厚みがあるのに、木地の段階では思っていた以上に薄く作られていました。元々、レタートレーやカードトレーを作る構想があったのですが、この厚みでできるのであれば、自分がこれまで温めていたものができると思って、製作をはじめることにしました。


職人さんたちがひとつひとつ、高い技術でもって仕上げていくところをみていたからこそ、大切な木材や輪島キリモトの技術を活かすようなものをつくらなければいけない。キリモト製品は、デザインを進める上でそうったプレッシャーも大きいお仕事です。

うるしとガラスの一輪挿しのこと

ペントレーやカードトレーがある程度、軌道に乗ってきた頃に、桐本さんから第2弾として、一輪挿しを作って欲しいという話しをいただきました。普通、漆などで一輪挿しを作る場合、ガラスなどの水をいれておくための「おとし」というものを作り、それを見せないように製品をつくっていくんです。


桐本さんからデザイン依頼を受ける、ちょうど2-3日前に、木村硝子店という会社の工場の見学に行ってきたこもあって、せっかくの綺麗なガラスを隠してしまうのはもったいない、と思ったんです。そこで、漆とガラスが喧嘩せずに、どちらも活かすようなバランスのものを作りたくて、このようなものになったんです。


最近は製品をつくるとき、スケッチを描いたら、すぐに試作を始めます。僕が作るものは構造とデザインが一緒で、実際に作ってみないと分からないし、そうしないとできないんです。生産工程が把握しやすいものしか作らないんです。だから、電気やモーター、薬品を使うものは自分が管理できないし、専門の人には叶わないと思うものは作らないんです。

輪島キリモト
桐本泰一さんインタビュー






































































古くから漆器の産地として多くの人々に知られてきた、石川県輪島市にある輪島キリモト。その地で昭和4年に創業し、漆器専門の木地屋として歴史を重ねてきた輪島キリモトは、現在は木地づくりの仕事の他にも、自らのブランドの企画や販売をされています。


そのキリモトの三代目である桐本泰一さんは、1962年生まれで、筑波大学芸術専門学群生産デザインコース卒業後、コクヨ株式会社の意匠設計部を経て、1987年にご実家である、桐本木工所に入社し朴木地(ほうきじ)職見習に。現在は漆器のプロデューサーとして、自らがデザインを手がけるだけではなく、多くのプロダクトデザイナーとのコラボレーションを行い、「日常生活で普通につかわれる漆」製品を目指し、企画、制作を続けています。

デザイナー山崎宏との出会い

2004年に私が個展を開いたときに、インテリアデザイナーの小泉誠さんやさまざまなデザイナーの方にお越しいただいた中に、山崎さんがいたんです。


最初は静かな印象があったんですが、私も彼もコクヨにいたことや、美味しいもの好きであったりと、とても話しが合ったんです。色々と話をしているうちに、本質を見抜いたことを聞いてきたり、何かピン!と感じるものがあったんですね。

   

うるしのステーショナリー

私が「いつものうるし」という本を作ることになって、何人かのデザイナーにうるしを使った製品のデザインをお願いしていたんです。そこで、山崎さんにステーショナリーのデザインをお願いすることになりました。


輪島の工房を訪ねてくれた山崎さんは「えっ?こんなことことができるんですか?」などと言いながら、その作り方や技術を真剣に見ていましたね。その理解力はものすごいです。工房の技術や生産量までも、ちゃんと見ているんですよ。


デザイナーの中には素材や技術を理解せずに、ただ、自分の製品に漆を塗って仕上ただけ、という人もいます。しかし、山崎さんの場合は、ちゃんと会って話を聞き、作る現場を見て、その情報を自分の頭の中で整理しておくんですね。

山崎さんのデザインは、作るのが簡単そうに見えるかも知れませんが、実はとてもむずかしい。こちらの得意とするところや技量を知っていて、そのなかでの最高値のものを出してくるんですね。手間は掛かるし技術も要るし、作るのはむずかしいけれど、決して作れないものではない。こちらも意地もありますから、それに応えますね。


このぺントレーだって、ペンを取りやすいように傾斜をつけているのですが、これがあることで木地の貼り合わせがとても難しくなる。カードトレーにしても、積み重ね易くするために裏のエッジを面取りまでして、収まりやすいようにしてある。私たちの工房の最高の技量を試されている、そんなデザインなんですね。

これからの「うるし」デザイン

「うるし」というと、どうしても伝統工芸品というイメージがあって、一部の人しか使わない、買わない、高くて特別なもののように思われています。しかし、実際には「うるし」で仕上げられたものはとても丈夫で、水にも強いですから、毎日の生活で普通に使えるものなんです。


ちゃんとうるしが乾いてから使えば、かぶれる心配もないですし、ガラスのコップや陶器のお皿と同じように、スポンジに水やぬるま湯で薄めた中性洗剤を含ませて、洗い流せばいいんですよ。特別なことはありません。


「うるし」は日本人なら誰でも知っている存在なのに、反面、これほど今の日本の生活の中に浸透していない素材はないのではないかと感じています。

最近、私が出会ったデザイナーたちは、毎日の暮らしを楽しみながら、自分たちの体験や経験を通して、デザインを考えています。私は、そういったデザイナーのの思いをかなえる工場として、信頼関係をきづきながら製品を作っていきたいと思っています。


もちろん漆を使った高級な工芸品や装飾品も大切だと思います。しかし私は、普通の人に毎日の生活の中で使われる道具をつくっていきたい。いつも使う漆器、普段の漆の道具たちをつくりたい。だから、今の空気を日々感じている、若いデザイナーたちと一緒になって、モノづくりに取り組んでいきたいのです。


輪島キリモトがつくる製品は、年配の方はもちろんですが、20から40代くらいの若い方々にも使っていただけるような、今の暮らし方に合ったモノでありたいのです。もしお客様が、何気なく「いいな」と感じた製品が、後で気づいたら「うるし」を使った製品だった。そんなふうに選んでもらえるモノたちをつくっていけたら、本当に嬉しいですね。

取材を終えて

ヤマサキデザインワークスの山崎さんがデザインされた製品は、一見すると無駄のない直線的なデザインが特徴のようにように思いますが、実はその奥にある、形ではないところにあるのではないか、とずっと思ってきました。今回改めてお話しをうかがい、さまざまな視点から問題の解決を考え、「一歩、先を見据えたデザイン」だからこそ、実際に使ってみたときに、そこにはちゃんと答えがあり、ずっと使っていたくなるような心地のよい製品になっているのだ、と分かりました。


今年の2007年3月に起きた能登半島地震で、輪島キリモトの工房も震災にあわれました。職人さんたちは無事だったものの、制作中の製品が破損したり、工房が壊れてすぐに作業ができないほどだったといいます。


しかしそういった状況をはね除け、桐本さんは日本の伝統的なうるしをもっと普段の生活の中で使っていただきたい、という思いから、輪島と東京を往復しながら意欲的に活動をされていらっしゃいます。そんな姿と職人さんたちが丁寧に仕上げた木工製品をみて、私自身ももっと伝えていきたい、と思うようになりました。そして、この息のあったお二人がこれから生み出していく製品とその先を、私も一緒にみつめていけたらと思いました。


アシストオンでは、8月2日まで「YAMASAKI DESIGN WORKS ++ 輪島キリモト」と題して、YMSKの製品と輪島キリモトの木と漆をつかった机上の生活用品の展示と販売をおこなっています。


店頭では、山崎さんが輪島キリモトの工房で目にした、名刺入れの薄い木地で作られていることが分かるパーツや、ペントレーのスケッチから製作工程が分かる試作品なども展示しています。また、秋に発売予定の新作のお披露目として展示しています。製品は実際に手にとっていただくことも出来ますので、ご自分にあった製品をぜひ、見つけてみてください。




インタビュー 斉藤有紀(AssistOn)2007.07.13

掲載した写真、およびインタビューテキストはAssistOnが独自に撮影、製作したもの、もしくは輪島キリモト、ヤマザキデザインワークスから特別に許可を取得し掲載しています。無断転載を禁じます。

about inFocus

単に見た目のデザインだけではなく、その品質や素材、使い勝手、そしてそれらを作りだした人々の「アイデア」についてもきちんとご紹介していくこと。 商品の販売だけではなく、様々な企画を通して、お客様や商品の流通や作り手のみなさんと一緒に、新しい「モノ」の有り方を考えていくこと。 それが私たちAssistOnの願いであり、また使命であると考えています。

inFocus は、展示会やwebによる情報発信を通じ、いま、まさに旬のさまざまなデザインにAssistOn独自の視点でフォーカスするシリーズです。どうぞご期待ください。