かみの工作展 at AssistOn

アシストオン原宿店  2008年2月15日 - 2月28日(終了しました)

デザイナーとの信頼関係も築きながら、ひとつひとつ、いいものを作っていきたい

デザイナーからの要望には、手間が掛かるようなこと、これまでに無いようなこと、むずかしそうなことなど、様々あります。

しかし私たちはなるべく「出来ない」とは言いたくない。諦めたくないんです。いいものを作らないと、デザイナーさんも張り合いがないと思うのです。それに、次も「かみの工作所」と作りたいと思っていただけないでしょう。だから、デザイナーさんの要望には応えていきたいんです。

デザイナーさんからの難解な要望に、最初は職人たちも戸惑うこともありました。しかし、職人気質もありますし、色々と工夫して、最終的には仕上げます。若いスタッフから熟練の職人まで、皆で協力して、いいものを作り上げてくれます。

かみの工作所 山田明良

8組のデザイナーが新しい発想で提案する かみの道具

書籍の表紙や絵本、商品の広告、カタログ、さらには電車の中吊り広告など。美しい色や写真、素材の表面加工に加えて、これまでに見たことが無かったカタチをしたもの、くり抜かれたもの、折り込まれたりした「新しいな」と驚く印刷物に出会う機会が増えてきたように思いませんか?


私たちの身近にある「紙」という素材の、楽しさと、あらたなる可能性に気づかせてくれる、このような技法。これを製造の現場から支えている人たちがいます。その中でもひときわユニークな取り組みをしているのが、東京・立川「かみの工作所」という集団。


印刷から型抜き、製函(はこ)までを行うことができる技術をもった印刷紙器会社、福永紙工の山田明良さん。デザインディレクターの萩原修さん、デザイナーの三星安澄さんの3人がその中心メンバー。


自分たちがもっている紙の加工技術を利用するだけではなく、実際にモノを創りだすグラフィックやプトダクトのデザイナーにもっと紙の技術を知ってもらい、いっしょに新しい紙の可能性を考えてゆく。そんなことを日々考え、活動を重ねています。


「アニマル・ラバーバンド」「Trash Pot」など、アシストオンでおなじみのアイテムを創ってくださったデザイナーを含む、8組のデザイナーが集結。「かみの工作所」といっしょに、あたらしい発想でつくりあげた「紙の道具」がそろいました。それが「かみの工作展」。暮らしや仕事や遊びの中で使う道具たちを、紙を折る、穴を開ける、という技術を基本にして、新しい発想で取り組み作り上げました。


どのアイテムも実際に見て、手に触れて、ご購入いただくことができます。私たちの身近にあるあたりまえの「紙」という素材から、どんなモノが生まれるのだろうか?この機会にぜひアシストオン原宿店にご来店ください。

inFocus vol.024
かみの工作展 at AssistOn
8組のデザイナーが新しい発想で提案する かみの道具

期間:2008年2月15日から2月28日まで(終了しました)
  (毎週水曜日はお休み)
場所:アシストオン原宿店
主催:かみの工作所・アシストオン
協力:つくし文具店
協賛:五條製紙
企画:萩原修
会場・DMデザイン:三星安澄

参加デザイナー:
 andesign
 EDU
 大治将典
 梶本博司
 DRILL DESIGN
 のぐちようこ
 passkey design
 三星安澄


andesign
address tray




アドレス帳とペントレーを一つで二役こなす、機能から生まれた形のアドレス帳です。

この白い紙の部分の側面が綺麗に揃っていますが、実は抜き型の同じ位置でカットした紙だけを集めものなんです。型で一度に10枚分をカットしますが、違う位置でカットしたものを混ぜると、側面がガタガタとなってしまうのです。

ロング:1890円 ショート:1470円(税込)


デザイナー andesign(佐々木博一さん、川崎恵美さん)からのメッセージ

address trayは、ペントレイの機能をもった住所帳。上部の波型の凹みにはペンをのせることができます。
連続する白い紙は取り外して文字を書き、再び差し込んで使えます。

携帯電話に記録してしまうことが多くなった大切な人の連絡先を、1枚ずつ手で書いて、1人ずつ差し込む、 忘れつつある書く行為を大切にするようなトレイにしました。

シンプルなデザインなので、置く場所を選びません。
抜いたり差したり、パズルのように楽しみながら、デスクに置いて、気軽に使っていただけたら嬉しいです。


三星安澄
p-g かみめがね




「かみの工作所」のデザインディレクター、三星安澄さんがデザインした、紙できたよく見える眼鏡です。

紙の表面にコーティングをして、強度を持たせました。更に、抜き型を一部直して、長さ50cmほどの細長い板状だったところ、折り畳んで持ち帰りやすいサイズのものも作りました。

小さい穴の"抜きかす"は、実は職人さんが1つ1つ手作業で取っています。

6種類 各315円(税込)


デザイナー 三星安澄さんからのメッセージ

一見パーティーグッズのように見えますが、「かみめがね」は実は大真面目な紙の道具です。

直径1mmほどの小さな穴のおかげで、レンズを使用することなく、ピントが合わせやすくなります。
紙コップや紙皿などの紙の道具は、「いつも」とは違う「非常時」にこそ大変便利な道具です。

紙で出来たこの眼鏡は、災害や事故などで眼鏡が壊れてしまったときの代替品として、非常事態の一時をしのぐために作られた眼鏡です。


EDU
白黒動物




「紙から抜いて組み立てると、6種類の動物になるカードです。

これは、白い紙に黒一色の印刷で、しかも、中身の動物とパッケージが1つの抜き型で同時に作れるため、紙の工作所の工程としては、比較的にスムーズに作っていくことができた製品です。

ただ、動物の形にきれいにカットする抜き型作りには手間がかかりました。

1セット6枚入り 1260円(税込)


デザイナー EDUさんからのメッセージ

「白黒動物」はハサミも糊も使わずに組み立てられる立体動物カードです。

平面時の模様からは6種類のうちどの動物なのか分かりづらくなっているので、それぞれに組み立てる過程を楽しんでみて下さい。動物として立ち上がった時に意外な喜びがあるはずです。

マイクロフルートという素材を使って強度と素材感を両立したことが、立体にした時の存在をより際立たせます。 組み立ての煩わしさがないのでメッセージカードやプレゼントとしてもぜひ。


DRILL DESIGN
BLOCK TRAY




お客様がいらっしゃったときのコップのコースターに。お菓子を取り分ける紙皿としても。1枚1枚剥がして使う紙のトレイです。

この金属のようなピカピカした紙は、表裏の紙質の差があり、第一回の「紙の工作展」で制作したときには時間が経つにつれて反りが発生してしまいました。しかし今回は裏面にビニールコーティングさせ、反りを防いであります。

そのお陰で、今度は背の部分に付ける糊が弾いてしまい、まとめるのに苦労しました。しかし、DRILL DESIGNさんの要望であった、ブロック感は出せたと思います。

20種類 各945円(税込)


デザイナー DRILL DESIGN(林裕補さん、安西葉子さん)からのメッセージ

BLOCK TRAYは紙の材質、テクスチャーを楽しみながら、自分の手で作る折り紙トレイです。

金属やプラスチックの様な質感を持つ特殊加工の紙を使用しており、一見それらの素材のかたまりの様に見えます。 その金属やプラスチックのブロックから1枚剥がして自分で折り曲げられるという不思議な感覚を味わってもらえるとうれしいです。

折り方は5種類、材質は4種類、好きなタイプを選んで折ってみてください。
デスク周りの整理や、パーティーなどのお菓子皿として、また、子供と一緒に楽しんで折る知育オブジェとしても楽しめます。


AssistOnで販売中のDRILL DESIGNの製品はこちら


のぐちようこ
コドモのどうぐばこ かるた




今回の展示会のために、萩原修さんが執筆し、のぐちようこさんがイラストを担当した本「コドモのどうぐばこ」(オレンジページ刊)を、急遽、かるたとして製品化しました。パッケージに関しては紙の工作所でアドバイスをしながら、2週間くらいで仕上げたものです。

アシストオンで販売しているみなさん良くご存知のアイテムもたくさん絵札の中に隠れていますよ。

1セット1,575円(税込)


デザイナー のぐちようこさんからのメッセージ

萩原修さんの本「コドモのどうぐばこ」がもとになった、ふだんの暮らしに使う道具がたくさん登場するかるたです。

橙色と緑色の2色を用いたことで、自然に2組にわかれて裏面の絵合わせを競ったり、思いがけなく遊びが広がってゆきます。

箱は本と一緒に本棚に並べられるようになっていて、本の装幀(D:sign)にあわせて同じロゴ、同じサイズにしました。

箱の穴からのぞく3文字は自由に言葉遊びをしながら、お片づけも楽しんでいただけたらと思います。


大治将典
wax paper file




ワックスペーパーでできた、ずっと大切にしたくなる書類ホルダーです。

はじめのころは縫製をしてくれるところが見つからなくて、紙の工作所・山田さんの奥様がミシンで縫っていました。今は工場が見つかったので、そこで縫ってもらっていますが、このような縫製は、工作所の今後の製品作りでも応用できるでしょう。

1セット3枚入り 525円(税込)


デザイナー 大治将典さんからのメッセージ

仕事柄クリアファイルを沢山使っているのですが、キズがついたり汚れてくるとみっともなく感じてしまい、新しいものと交換して古いものは捨てていました。キズや汚れがついてもそれが愛着になるような素材や作られ方をした書類ファイルならもっと大事に長く使えるのではないかと思い、デザインしました。

使えば使うほど味が出るワックスペーパーを使った書類ホルダー。留めの部分は太い糸で縫製しています。シワやキズが増えていくごとに、どんどん愛着がわいてくる書類ホルダーです。


passkey design
ことりのモビール




「Animal rubber band」のデザイナーでもある、passkey designさんがデザインした2色セットの小鳥のモビールです。

元々、女子美術大学の学校案内のパンフレットとして制作された作品。抜き型のモビール部だけを活かし、今回、製品として新たに作ったもので、一番出来たての製品です。

1セット2枚入り 1,260円(税込)


デザイナー passkey designさんからのメッセージ

「チュー!」っと突き出したクチバシの愛嬌ある小鳥たちを動かして、バランスをとる厚紙製のモビールです。

クッキーのような優しい風合いの厚紙と鮮やかな紙ひも。黄緑の透ける帯のコントラスト。色々な紙の質感をお楽しみ下さい。

アイボリーとチャコール2組で1セット。組み合わせ可能です。色鉛筆などで彩色したり、メッセージを描いてオリジナルのプレゼントにもどうぞ。

お部屋のキュートな相棒として活躍してくれると思います。かわいがってあげてください。


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梶本博司
イカそうめんシステムランプ



紙にいくつもの切り込みが入った、イカそうめんのようなランプです。

今回の展示会では参考出品ですが、梶本博司さんが紙の工作所の工場にいらして、いろいろな紙を持ってきては、「これに切り込みを入れて」と、どんどんカットてこのようなカタチができあがりました。


デザイナー 梶本博司さんからのメッセージ

「イカそうめんランプ」はまさにイカに何本も包丁を入れ、さあ口に運ぼうとしたときに思いついた照明です。 人為的に作られた形状ではなく、自然が作り出す造形や動作によるデザインなのです。

紙に抜き型で均等にスリットを入れ、両端を円筒に巻き付け、それを回転させるとスリットが変化し、光量や照明自体の雰囲気が変えられます。

「イカそうめんランプ」は、まるで自分の手が食べられてしまいそうな照明です。まだ試作品ですが見るだけでなく、触って、回して、その動きを楽しんでいただけたらうれしいです。


AssistOnで販売中の梶本博司さんの製品はこちら

かみの工作所 山田明良さん
インタビュー























かみの工作所

印刷紙器会社、福永紙工株式会社のブランド。化粧箱など紙製品の印刷、打抜/貼加工を一貫製造している福永紙工のノウハウと、デザイナーの斬新な創造性を融合。紙製品の可能性を、既存の枠にとどまらない自由な発想で、切り開いたり、折り畳んだりしていきたいと考えます。
http://www.kaminokousakujo.jp/




















箱はこのような機会で自動的に組み立てられていきます。




紙の打ち抜きには、このような木版に刃をはめた型をつくります。刃の厚さはわずか0.7mm。





打ち抜き型の全景。この型のクオリティーが出来上がりを左右してきます。刃の横についているオレンジ色のゴムは紙に入った刃を引き抜くときにストッパーとなって、紙を押し返してくれる重要な役割を果たしています。






まさにこの型をつかって出来上がったのが、これ。実は今回の「紙の工作展 at AssistOn」のためにつくられたDMの打ち抜き型です。





題して「つくってあそべる加工見本」。紙の工作所の技術力の分かる、見本シートになっています。





三星さんデザインによるこの加工見本は、組み立ててオブジェとして飾っておくことができます。新しいアイデアを引き出す「紙加工見本」としてお使いいただくことができます。今回の展示会で無料配布していますから、デザイナーさんは是非、入手してください。





萩原修さん

デザインディレクター 家具や日用品、生活の中のさまざまな展覧会のプロデュース、そしてデザインに関する本の執筆や編集などもされ、東京都の国立市にある「つくし文具店」の店主でもいらっしゃいます。日本を代表するデザイナーから若手デザイナーまで、皆を巻き込んで新しいことを企画されています。雑誌「Pen」の連載、著書に「9坪の家」ほか多数。つくし文具店






三星安澄さん

1980年生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒。かみの工作所ディレクター。在学中より野老朝雄に師事。現在はフリーランスで活動中で、ロゴのデザインからweb、エディトリアル、パッケージ、家具建築まで、平面立体を問わず制作活動に携わっています。http://www.az-3.com






国立デザインセンター

国立に住んでいる人、国立で働いている人、国立に縁のある人たちがつながることで、魅力的なまち国立をさらに楽しむための活動体です。 建築家やデザイナー、プロデューサーやディレクター、編集者などが、ふだんの仕事をこえて、共同し、さまざまなプロジェクトを主体的に立ち上げ、大切に育てていきます。ひとつの思いが少しずつ共感を得て、実を結ぶことを願っています。http://www.chub.jp/





















デザインのプロなら知っておきたい知識満載のムック「デザインのひきだし」の最新刊「4」では、「コストに優しい おもしろ印刷・アイデア加工」を特集 紙の工作所が全面協力しています。段差のある不思議な表紙も紙の工作所が手がけたものです。 (くわしくはこちら)

2008年1月10日、デザイナーと共同で、紙を加工したモノの可能性を追求するブランド「かみの工作所」の展示会をアシストオンで開催するにあたり、製品を生み出している現場である、福永紙工株式会社をたずねました。

福永紙工の社長、山田明良さんは、以前はアパレル会社にいらした経験もあり、デザインへの関心も高く、工場の社長といっても40代半ばの若い社長です。「かみの工作所」がスタートしてからは、デザイナーの方々から「困ったときの山田社長」と言われるほど、頼りにされる存在となっています。

福永紙工は立川駅から徒歩20分ほどのところにあり、冬の高く澄んだ青空の下、遠くに望む山々を見ながら向かって行くと、工場の大きな三角屋根が見えてきます。入り口には、大きな紙の束がいくつも壁のように積み上げられ、すぐに印刷や紙を扱う工場であることが分かりました。

働く方々とすれ違うた度に「いらっしゃいませ」の明るい声に出迎えられ、工場内に一歩足を踏み入れると、カシャン、カシャンと印刷機や裁断機のリズムよい音が聴こえ、インクの匂いで、学校の美術室や図書館にいるような懐かしい気分になります。

早めに着いた私たちを、社長の山田明良さんが、にこやかに迎えてくださり、工場のことや「かみの工作所」についてお話をうかがいました。

福永紙工のしごと

福永紙工は1963年(昭和38年)東京都立川市に創業し、今年で46年になる印刷や紙の加工をおこなう会社で、元々は段ボール屋さんだったんです。先代の社長(現、会長の福永秀夫氏)が創業し、東京の多摩地域を中心に、地元企業の会社案内やお菓子屋さんの化粧箱など、20年来のお客様と信頼関係を築きながら、着実に取り組んできました。

通常、印刷の業界では、印刷や紙加工は工程ごとに何社にも渡って分業されますが、福永紙工では、このひとつ屋根の下でおこなえます。印刷から紙の加工、パッケージの組み立て、納品までを一貫しておこなえるんですね。そうすることで、スケジュールや品質のコントロールできますし、コストも抑えられるのです。

現在では、地元企業だけではなく、大手企業の名刺やパンフレット等の大量の印刷もおこなっています。平面に仕上げるものだけではなく、美しい仕上げが求められるお菓子の化粧箱をはじめとした、製品パッケージの製作は得意ですね。

特に「Gフルート段ボール」(マイクロフルート)と呼ばれる、極薄の段ボールの印刷技術に関しては自信があります。

「Gフルート段ボール」の印刷について説明しますと、普通、薄い段ボールで製作する場合、直接印刷してしまうと、段ボール構造の波になっている部分が潰れてしまいます。

そのため、いったん、薄い紙に印刷したものを、後から段ボールに貼り合わせて仕上げます。ところが、うちでは極薄の段ボールでも、そのまま印刷がかけられるんですね。ですから、貼り合わせる手間もコストも抑えることができるのです。

決して特殊な機械を使っている訳でもないんですが、他の会社では引き受けないようなことでも、依頼主やデザイナーの要望に応えるようにしています。職人の技術もあるからこそできることなんですが、私たちは価格だけで左右される仕事ではなく、質の高い仕事をしていきたいんです。

印刷業界は製紙メーカーや広告代理店、印刷会社といった大手企業が数社あって、その下に実際に印刷や紙加工をおこなう、我々のような中小規模の企業がほとんどです。製作物が発注されてから出来上がるまでには、作業工程ごとに、何社も何社も経ていくため、非常に無駄が生じやすい多い業界なんです。

そうすると、仕事の品質ということよりも、仕事を取るための価格競争になってきてしまうんですね。僕はそこには参加したくないですし、先代がお客様を大切にしてやってきたことを、これからもやっていきたいのです。

かみの工作所のはじまり

価格競争の厳しい印刷業界の中で、他社との差別化や独自性を出していくにはどうしたらいいのか、日頃から考えていました。

そんなとき、たまたま自宅の近所にあった、ちょっと変わった文房具屋さんに入ってみたんです。普通の文房具屋さんとは違い、デザイナーが作った製品を売っていたり、展示会をおこなっていたりと、以前から気になるお店でした。それが「つくし文具店」でした。

お店に入ってみると、店主の方がいらっしゃって、いろいろとお話をすることができました。僕の会社が印刷や紙の加工を一貫しておこなっていること、加工技術を活かした新しい取り組みをしたいこと。会ったばかりの店主にいろいろ話を聞いていただいたら、とても関心をもってくださった。その店主がデザインデレクターの萩原修さんだった、というわけです。

萩原さんは展示会や商品、本の企画やプロデュースを行いながら、かつてお母様が営んでおられた文具店を引き継いでおられた。たまたま私が訪ねたその日には、その「つくし文具店」の店頭に立っておられた、というわけです。この出会いが「かみの工作所」を立ち上げることになった、最初のきっかけ、2006年の春先のことです。

ちょうどこの出会いの少し前には、萩原さんが関わっている「国立デザインセンター」が立ち上がったばかりでした。「国立デザインセンター」は、東京都の国立を拠点とするデザイン活動体です。建築家、グラフィックデザイナー、プロダクトデザイナーといったデザイナーやクリエイターだけの集まりではなく、地元企業と一緒にものづくりをしていくことを目指していたんですね。

そこで、デザイナーと企業つなぐプロジェクトの第一段として、「国立デザインセンター」のメンバーでもあるデザイナーの三星安澄さんがディレクターとして加わり、2006年4月に紙を加工したモノの可能性を追求するブランド「かみの工作所」が福永紙工から誕生させました。

かみの工作所でのしごと

まずはじめに「かみの工作所」では、どんな技術で、どんなことができるのか、知ってもらうための営業ツール「BUSSINES PACK」を作りました。

これは紙をカットしたり、穴を空けたりするだけではなく、表面にスジを付ける「スジ押し」、凹凸をつける「エンボス加工」、お菓子箱の開封などで良く見かける「ジッパー加工」など、紙の加工見本を兼ねたものにしました。出来上がった「BUSSINES PACK」はさっそく、それらのニーズがあると思われた企業へ向けて送ってみました。しかし残念なことに注文に繋がるような反響は全くなかったのです。

ところが、実際にデザインやものを作っていくデザイナーたちに見せたところ、皆さんとても驚かれ、興味津々でで手に取ってくれたのです。

そこでさっそく方向転換して、うちの技術を知ってもらうために、デザイナーの方々を集めて工場を案内してまわることにしました。また「国立デザインセンター」のプロジェクトや展覧会などとも連携して、積極的に参加することにしました。

そうしたいきさつを経て、2007年6月には「つくし文具店」の開店2周年記念イベントとして「かみの道具展」を開催し、ここではじめて「かみの工作所」のオリジナル製品をお披露目することになりました。

アシストオンで今回、展示販売するものは、この時のオリジナル製品をもとにして、さらにスケールアップしたものです。どのアイテムも細部に渡ってクオリティーをアップさせ、新たなデザイナーにも参加していただきました。

かみの工作所の現場とクオリティー

一般的にはデザイナーのみなさんが印刷所や紙の加工の現場に来られることは、たいへん少ないようです。しかし、「かみの工作所」の仕事では、デザイナーさんにこの工場に来てもらって、現場で見ながら仕上がりを確認してもらうことにしています。

特に印刷の色については、デザイナーさんの指定通りの色で印刷しても、実際に印刷する紙の色や質感、光の反射などによって、見え方が微妙に変わってくることが良くあります。その場合、デザイナーさんがイメージするものに合わせてインクを調合し、試し刷りしたものを、すぐその場で確認してもらいます。

現場で確認しているから、意思の疎通ができますし、お互いに作業もスムーズです。結果、仕上がりのいいものができる。デザイナーさんと現場で作業をする職人が一緒になれるのも、「紙の工作所」があまり他では例を見ない、印刷から納品までを一貫して行っている強みといえるでしょう。

デザイナーからの要望には、手間が掛かるようなこと、これまでに無いようなこと、むずかしそうなことなど、様々あります。

しかし私たちはなるべく「出来ない」とは言いたくない。諦めたくないんです。いいものを作らないと、デザイナーさんも張り合いがないと思うのです。それに、次も「かみの工作所」と作りたいと思っていただけないでしょう。だから、デザイナーさんの要望には応えていきたいんです。

デザイナーさんからの難解な要望に、最初は職人たちも戸惑うこともありました。しかし、職人気質もありますし、色々と工夫して、最終的には仕上げます。若いスタッフから熟練の職人まで、皆で協力して、いいものを作り上げてくれます。

このような経験を重ねるうち、今では紙の工作所のオリジナル製品の製作だけでなく、デザイナーさんが個々に関わっている仕事の製作を私たちのところで制作したい、と指名していただけるようになってきました。今では製品パッケージやダイレクトメールなど、様々なカタチで実を結びつつあります。これからも工場見学の機会も増やして積極てな取り組みを続けていきます。

インタビューを終えて

今回、印刷と紙の加工を行なう福永紙工さんの工場にお邪魔させていただきました。工場というと殺伐としたイメージを持たれる方も多いと思いますが、工場内は整理整頓され、そこで働くスタッフや職人さんたちがいきいきと働く姿が印象的でした。

「今は、デザイナーとの信頼関係も築きながら、ひとつひとつ、いいものを作っていきたい」という山田明良さん。かみの工作所のことや職人さんたちのことを話す時の優しく、嬉しそうな笑顔が記憶に残りました。今後も、デザイナーからの新たな要望に、「かみの工作所」として、どう応えていくのか。新たにから誕生するモノはどんなものになるのか、今後の展開に期待が高まります。

アシストオンでは、2月15日から2月28日まで、8組のデザイナーによる、暮らしや仕事や遊びなどで使う「かみの道具」を提案する展覧会「かみの工作展」を開催します。

アシストオンでも縁のあるデザイナーをはじめ、8組のデザイナーによる、さまざまな紙の加工を活かした製品が並びます。店頭では、紙の加工についての紹介や、かみの工作所で生まれた製品を実際に手に取り、お買い求めいただくことができます。

折ったり、切ったり、曲げたり、穴を空けたり...
だれにでも身近にある紙を、デザイナーの新しい発想で、どんなモノができるのか。この機会に、その可能性の一端を見てください。




インタビュー AssistOn企画・広報部 斉藤有紀/豊川梨花 2008.1.10 

かみの工作所の連絡先
http://www.kaminokousakujo.jp/



掲載した写真、およびインタビューテキストはAssistOnが独自に撮影、製作したもの、もしくは福永紙工株式会社、関係各メーカーから特別に許可を取得し掲載しています。無断転載を禁じます。

about inFocus

単に見た目のデザインだけではなく、その品質や素材、使い勝手、そしてそれらを作りだした人々の「アイデア」についてもきちんとご紹介していくこと。 商品の販売だけではなく、様々な企画を通して、お客様や商品の流通や作り手のみなさんと一緒に、新しい「モノ」の有り方を考えていくこと。 それが私たちAssistOnの願いであり、また使命であると考えています。

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