TheCableBoxとTheSanctuaryをつくる方法

アシストオン原宿店  2009年5月1日 - 5月21日

個人的な経験を、エレガントな問題解決につなげる

デザインの発想は、すべてわたしの個人的な経験から得ています。自らの生活に何が必要かを考え、できれば他の人たちも同じものを欲しいのではないかと思うのです。

基本的には、自分が必要だと感じているのに、どこにも売っていないような製品があれば、それをデザインします。おそらく、探し足りない場合もあるでしょうし、何らかの製品が見つかっても満足できないこともあります。しかし、いずれにしても、きっかけは個人的なニーズです。

ただし、ここで壁に当たります。こうした問題解決というのは、たいていの場合、エンジニアリングの領域に属しているからです。ところが人々は、エンジニアリング的に優れているからという理由で、製品を買い求めるわけではありません。ハートに訴える何かが必要なのです。

最終的に機能を満たしていなければ買っていただけませんが、もっと重要なのは、最初に感じるインパルスです。愛してもらえる製品作りが、大切だと思います。そして、最も美しくエレガントな方法で問題を解決できるデザインを行うことが、私の願いです。

BlueLounge ドミニク・シモンズ

"Everything should be made as simple as possible, but not simpler."

「すべてのものを、それ以上できないほど、シンプルに」 これがBlueLounge(ブルーラウンジ)の目指していること。

1999年、創設者でありデザイナーであるドミニク・シモンズとメリッサ・サンジャヤと共にロサンゼルスで設立。彼らが創り出すものは家具、靴、メガネ、そしてかゆいところに手の届くアクセサリーなど、多岐にわたります。そして、その考え抜かれたデザインによって、私たちの身の回りにある小さな問題の解決策を提案し、可能な限りシンプルな製品作りを続けてきました。

若くしてミラノ・サローネで絶賛を浴びる家具を手掛け、オフィス家具の歴史的名作を作ってきた名門、ハーマンミラーでも家具をデザインしたドミニク氏。グラフィックデザインの分野でも、日本のパナソニックや、ユニクロのデザインを行うなど、幅広いデザイン活動を続けてきました。

そのドミニク氏が、自分自身でデザインから製造を手掛け、金型を起こし、販路を開拓してきたブランド、それが「BlueLounge」。みなさんよくご存じの、アシストオンでの大ヒット製品「TheSanctuary」、「TheCableBox」はすべてこれら「BlueLounge」の製品たちなのです。

たんに造形が美しい、シンプルだということだけではなく、身近に置いておきたい。そして私たちが欲しかったのはこの形だった、この機能だった、おもわせてくれるBlueLoungeの製品たち。この魅力的な製品が出来上がってくる、その発想のみなもとはどこにあるのか。今回のAssistOn inFocusではこれをみなさんで探ってゆくことにしましょう。

inFocus vol.031
TheCableBoxとTheSanctuaryをつくる方法

期間:2009年5月1日から5月21日まで
  (13日と20日は定休日)
場所:アシストオン原宿店
主催:アシストオン
協賛:トリニティ、BlueLounge


Blueloungeの製品は通信販売でもお買い求めいただけます




今回、ご紹介したBlueLounge製品はすべて通信販売でもお求めいただくことができます。

特にその中でも「CableBox」の小型版、「CableBox mini」はアシストオンのお客様のご希望の声に応えて制作されたもの。さらに「CableDrop」「StudioDesk」もアシストオンが世界発売にさきがけ、当店だけの先行発売です。販売数は限られていますので、ご希望の方はお急ぎください。

あきらめていた電源コンセントまわりごちゃごちゃ、解決します!

発売以来の超ベストセラー製品に、アシストオン先行発売の「ミニ」バージョンが誕生しました! TheCableBox

携帯/iPod/iPhone/PSPなど、小型デバイスの充電をスマートに
TheSanctuary

ノートーパソコンのケーブル環境を整え、快適な作業空間をつくります
TheSpaceStation

キー入力を快適にして、放熱効果も生まれるMacBookユーザー必須アイテム
coolfeet

イヤフォンをiPod本体に吸着して使用できる、シンプルな巻き取り装置
cable yoyo "POP"

デジタル機器のケーブルの整頓に 移動環境にも最適化された巻き取りシステム
cable yoyo

ケーブルをクリップ、ペンをクリップ 机上で便利なグミのようなクリップ
CableDrop

デジタル環境をまとめて配置してくれる、あたなのための発想支援基地
StudioDesk



BlueLounge
創立者兼デザイナー、
ドミニク・シモンズさん
インタビュー




ジャカルタにあるBlueLoungeのデザインオフィス


米国Airwalk社のスノーブーツのデザイン


米国etura社のスポーツシューズのデザイン


オーストリアEspressoIndustries社のエスプレッソマシン


米国Wiliams-Sonomaから発売されているボトルオープナー


イタリアMaxDesignのイスのデザイン 2003年のミラノ・サローネで発表され大きな話題となった


ドイツFlototto社の照明のデザイン


Herman Miller社のオフィス家具のデザイン たいへんシンプルな構造で組み立て、分解が簡単になっている


ドイツRitzenhoffのグラスのグラフィックデザイン


パナソニックの乾電池のパッケージデザイン




ユニクロのTシャツのためのグラフィックデザイン


書棚のデザイン(コンセプト・デザイン)


"1001 Arabian Night"という名前の屋根付きベンチのデザイン(コンセプト・デザイン)


BlueLaunge初のオリジナル製品となった「cable yoyo」


単にケーブルを巻き取ることができるだけではなく、取り付けパーツが存在することから、ACアダプター本体の目隠しも可能な構造になっている


製品化の前のコンセプトシート 最終的な製品とほとんど変わらない形で実現していることがわかる


中央部の取り付けパーツを工夫して、2連での使用も考えられていたようだ


パソコンやAVまわりのケーブルをコンセントごと整理することができる「TheCableBox」




「TheCableBox」のデザインスケッチ


「TheCableBox」の最初の試作品 フタの部分に黒色の帯があり、ケーブルの排出口も小さかったことが分かる




ノートーパソコンのケーブル環境を整え、快適な作業空間をつくる「TheSpaceStation」 ケーブルオーガナイザーと周辺機器の配置を1つで行うことできる


「TheSpaceStation」の最初のデザインスケッチ 表面には「とげ」のようなものがあって、それを使ってカードや書類タテの機能を持たせようとしていたことが分かる


「TheSpaceStation」の製品化前のコンセプトシート 名称もこの頃は「SpaceBar」となっており、滑り止めシートの色が赤色になっている


携帯/iPod/iPhone/PSPなど、小型デバイスの充電をスマートに充電できる「TheSanctuary」 トレー内部には高度な充電システムが組み込まれている


「TheSanctuary」のデザインスケッチ


BlueLaungeのPC周辺アイテム、そして家具デザインのノウハウの結晶ともいえる「StudioDesk」








「StudioDesk」のデザインスケッチ


キー入力を快適にして、放熱効果も生まれるMacBookユーザー必須アイテム「coolfeet」


「coolfeet」はPC本体からの脱着もかんたんで、赤色のしゃれた収納用ケースも付属している


脱着することの多いケーブル類を固定しておくことができるホルダー「CableDrop」


ケーブルの他にもイヤフォン用のハンガーや、ペンホルダーとしての利用も可能

2009年3月13日、アシストオンでも「TheCableBox」や「cable yoyo」などで定評のあるメーカー、BlueLoungeの創立者兼デザイナーであるドミニク・シモンズさんに、スタジオと住居のあるインドネシア・ジャカルタから、わざわざ来日していただき、インタビューを行いました。

デザイナーになったきっかけや創作の秘密、そして新旧の作品へのこだわりなど、Bluelounge製品の魅力の源が、今、明かされます。

5歳で絵に目覚め 12歳でデザイナーを目指した

両親はイギリス人ですが、私自身はスイスのフランス側の地方で生まれました。5歳のとき、学校で木のスケッチを描いたところ、先生からクラスで一番だと褒められて、その時からドローイングに関してはいつも一番でありたいと思ってきたのです。

実際に物を描くことが大好きで、それと同じくらい数学や物理も好きな科目でした。ラッキーなことに、自宅のすぐ近くにとても優れたデザイン学校が開校して、カーデザインやプロダクトデザインなどを身近に感じる機会がありました。アメリカのアートセンターカレッジ・オブ・デザインのスイス校です。

そして、12歳の頃に、アートでもエンジニアリングでもなく、デザインこそが、自分のドローイングや数学や物理の能力を活かせる職業だと気づきました。

目標を見つけた私は、勉学に励み、18歳でスイス校からカリフォルニア校に移ります。学生時代からパリやカリフォルニアで少しずつデザインの仕事をする機会に恵まれ、1996年の卒業と同時に、1年間の就労ビザを得ることができました。

そこで今度は、サンフランシスコの建築事務所で働き始めました。もうお分かりでしょうが、私は分野の異なる学問や知識に触れることが好きなのです。そこは小さな会社でしたが、建築以外にプロダクトのデザインも手がけていて、3年ほど勤めました。それは、とても良い経験でした。

というのは、会社のメインのビジネスはもちろん建築とインテリアであって、プロダクトデザインの部門は、私ともう1人のスタッフだけだったので、新卒でも大きな責任を持たされたからです。プロダクトをデザインするのに必要な様々なことは、そのときに経験したと言えます。

それでも、自分の会社を作りたいという気持ちは常にあって、そのためにはパートナーが不可欠でした。1人ですべてのことをカバーするのは不可能です。最終的には、現在の妻であるメリッサと知り合い、一緒に会社を立ち上げることができました。1999年の末のことです。

彼女はグラフィックデザイナーであり、これも異なる分野の融合の1つと言えるでしょう。現在では気候の良いジャカルタにスタジオを置き、ここを拠点として活動しています。

家具からスタートして幅広く活躍

実は、独立を急いだのは、私たちがデザインしたサウンドサテライトという作品がミラノのファニチャーフェアの審査を通過して、翌年の4月の開催にサンプルを間に合わせる必要が出てきたためでした。そのおかげで、2人とも会社を辞める決心がつき、Blueloungeを設立できたというわけです。

ショーには6つの家具を出展して話題となり、その年だけで50から60件もの取材を受けました。そして、しばらくの間、それが私たちのビジネスの方法論となっていきます。つまり、まずコレクションを発表し、プレスの取材によって広く世間に知ってもらい、そしてクライアントの目に留まるという流れです。

幸運なことに、ハーマンミラーやパナソニック、ユニクロとも仕事ができました。ユニクロには、Tシャツのグラフィックデザインを提供したのですが、家具をデザインしたことで私たちのWebサイトが注目され、そのグラフィックデザインにも目が留まったのです。家具の開発には時間がかかり、なかなかそれだけではビジネスになりにくいのですが、自分たちにとっては優れたマーケティングツールになってくれました。

また、学生時代にインターンとして働いたときには、フットウェアのデザインも手がけています。スノーボード用のブーツや用具、シューズなどをデザインして、これも良い経験となりました。

逆に、家具製品については、微妙な側面も出てきました。大きくて嵩張りますし、生産の管理や発送なども大変ですからね。それで、常に興味はありながら、本当に自分たちが取り組むべきものなのか、疑問に感じていました。

その意味で、最初に等身大の製品だと思えたのは、「cable yoyo」でした。元々は別の大きなプロジェクトの一部だったアイデアを、より汎用的に考え直したものです。

できあがったデザインをMuji(無印良品)に送ってみたのですが、ご存じのように、Mujiは世界中から多くのデザインの売り込みがあるところで、残念ながら採用はされませんでした。

しかし、これなら自分たちで製造と販売を行えそうだと考え直して、資金を調達し、金型を起こして製品化しました。もちろん、明確な将来計画に基づくものではなくて、ほんのスターティングポイントのつもりでした。これで何が起こるか、見てみたかったのです。

これがきっかけとなって、続く2年間は、そういった小さな製品の開発をいくつか行いました。デザインを提供する見返りにお金をいただくデザインスタジオと違って、製品の製造には先に大きな投資が必要です。それで、自分たちでも何とかできる範囲の、小さな製品群に限ってプロジェクトを進めました。

2年が経ち、相変わらずプロダクトデザインやグラフィックデザインも手がけて自分たちのビジネスをサポートする必要はあったものの、独自開発の製品も15ヶ国で販売代理店が付き、やっていることに自信が持てるようになりました。そこで、最初に感じていたようなリスクはなくなったと思い、投資家を募って、製品ラインを充実することにしたのです。

2007年末には投資家が見つかり、2008年から「TheSanctuary」や「TheSpaceStation」や「TheCableBox」などの新しい製品群を生み出すことができました。

個人的な経験を エレガントな問題解決につなげる

デザインの発想は、すべて自分の個人的な経験から得ています。自らの生活に何が必要かを考え、できれば他の人たちも同じものを欲しいのではないかと思うのです。

基本的には、自分が必要だと感じているのに、どこにも売っていないような製品があれば、それをデザインします。おそらく、探し足りない場合もあるでしょうし、何らかの製品が見つかっても満足できないこともあります。しかし、いずれにしても、きっかけは個人的なニーズです。

ただし、ここで壁に当たります。こうした問題解決というのは、たいていの場合、エンジニアリングの領域に属しているからです。ところが人々は、エンジニアリング的に優れているからという理由で、製品を買い求めるわけではありません。ハートに訴える何かが必要なのです。

最終的に機能を満たしていなければ買っていただけませんが、もっと重要なのは、最初に感じるインパルスです。愛してもらえる製品作りが、大切だと思います。そして、最も美しくエレガントな方法で問題を解決できるデザインを行うことが、私の願いです。

その意味で、デザイナーのジャスパー・モリソンは尊敬しています。シンプルなのに飽きの来ないデザインを生み出しているからです。新しく見えることよりも、良いバランスを作り上げることを目指していると言えるでしょう。

それから、深澤直人の思考プロセスにも興味があります。思考プロセスという点では、フィリップ・スタルクもそうですね。彼の最終的なデザインはあまり好きではないのですが、それを作り上げるまでの過程は、とても理知的でウィットに富んでいます。

最近ではブルレック兄弟の作品も注目しています。まだ若い2人ですが、そのデザインには素晴らしいものがあります。

使い手の心の状態を 変えてしまう製品作り

Blueloungeという会社名は、製品の製造販売を始める以前のデザインスタジオの時代から受け継いだものです。私たちはプロダクトとグラフィックのデザインからスタートしましたが、アニメーションやマルチメディア、映画のタイトル制作に秀でた親友がいたり、いつかは建築関係の人材も入れたいと思っています。

社名は、そうした人たちの才能を結集して、使い手の心の状態を変えてしまうような製品が作り出せれば…という思いから付けられました。ラウンジという場所は、視覚や聴覚や触覚に訴えるような演出を施すことで、パーティ会場になったり、クールダウンするところになったり、色々と変身しますね。

実は、それは、そこに居る人々の心の状態が変わるということなんです。Blueloungeもそうありたいと願っていますし、将来的には実際にそういう創作スタジオを作り上げたいと考えています。

一方で、社名の頭にブルーを冠していますが、なぜブルーなのかというと、Blueloungeという言葉の響きが良かったからです。もちろん、ブルーという色から想起される心地よさもありますし、変にトレンディではない普遍的な色だというところも気に入っています。

たとえば、今だとグリーンが流行りのカラーですが、ブルーにはそういうところがなくて、もっと中立的で永続的なイメージです。

ただ、Blueloungeの最初のロゴの色はレッドにしていました。おかしいでしょう? でも、ロゴまでブルーでは当たり前すぎて面白くないと感じたので、あえてレッドにしていたのです。

スケッチに時間を割き アイデアの熟成を待つ

デザイン開発にあたって、一番時間を割くのはスケッチです。いや、朝起きて、最も時間がとられるのは電子メールの処理かな(笑)。それは除くとして、実際のデザイン作業では、スケッチというのは自分にとっての自由時間のようなものです。

アイデアを発想したりスケッチを描く作業は、意識的に時間を作って行います。オフィスを出てコーヒーショップに行ったり、ブックショップを覗いたり、リラックスできる時間が必要です。そして、実際に何か思い浮かぶのは、歩いているときだったり、クルマの中で座っているときだったりします。

そして、たくさんのスケッチを描きますが、それがクライアントのない自分たちのプロジェクトである場合には、〆切りというものがありませんから、アイデアが熟してくるのをじっくりと待つのです。

たとえば、モックアップを作って机の上に放置しておいたり、自分で使って試してみることもあります。そういう状態が半年くらい続いても構いません。それで、ようやく、これなら行けるかもしれないと思い始めるわけです。

「TheCableBox」は、「cable yoyo」よりも前から考えていましたが、何度もデザイン変更を行っているうちに、完成は後になってしまいました。どうしてもっと早くプロジェクトを進められなかったのかは、自分でもわかりません。しかし、このような製品が成り立つはずだという思いは、ずっと以前からあって、それが復活を遂げたのです。

StudioDeskも、同じようなところがあります。これは、もともとパサディナのオフィスで自分のために作った机が原型となっていて、ケーブルをうまく処理するにはどうしたら良いのか、自分で試してみたものです。まだ、Blueloungeの製品が何もなかった頃の話で、それ以来、このアイデアは常に頭の中で回り続けていました。

スケッチは、まずボールペンで描き、アイデアがある程度固まってきたら、Adobe Illustratorを使って平面的な部分のディテールを詰めて、3次元モデリングツールのSolidWorksでの作業に移ります。

時には、スケッチからすぐにSolidWorksで立体化して、シェイプの確認を行いますが、そうするとスケッチ通りの形を再現できないこともあるのです。そういう場合には、やはりIllustratorできちんと細部の形状を規定し、プリントアウトによって確信を得てから、再びSolidWorksに戻ります。

いきなり3次元化すると、本当に些細な部分でどこかスケッチと違う部分が出てくるケースも多く、それをすくい上げるためには、あえて回り道をすることも重要です。

最終的に、製造工場には3次元のデータを送ります。以前は、プロトタイプは自分で作っていたのですが、エンジニアリング的な部分に関しては本当の意味での専門家ではないので、どうしても試行錯誤が多くなっていました。

今は、プロトタイプを作ってくれる会社が中国にあって、そこでエンジニアリング的な作業を行ってもらい、検証用に送られてきたモデルをチェックするようになっています。

大・小のTheCableBoxは 互いに補完する存在

「TheCableBox」のスモールサイズは、アシストオンをはじめとする、販売チャンネルのみなさんからの要望で開発された製品です。

国ごとに異なるニーズがあるので、ビッグサイズをデザインするときには、アメリカの電気店などに足を運んで、ACアダプタのサイズを調べてみました。あの国では、何でも大きいですよね(笑)。コンセプトプラグも3本足なので、さらに場所をとってしまいます。そういうことも考えに入れて、たいていのACアダプタが入れられる大きさで、しかも最小限のサイズを目指しました。

「cable yoyo」の大きなものを出して欲しいという声も聞かれたのですが、あれは1.8mのケーブルが過不足なく巻けるように作られていて、それを拡大しても正しい製品にはなりません。自分にとっては、「TheCableBox」こそが大きな「cable yoyo」に相当するものだったのです。

ところが、日本では何でも小さいですね(笑)。もちろん、ビッグサイズの「TheCableBox」もよく売れていますが、スモールサイズへの要望も多く寄せられました。単なる縮小化ではなく、プロポーションの調整などを行った結果、とてもキュートな製品となり、自分でも気に入っています。まずは日本向けで発売して、それから他国での反応を探っていくつもりです。

ただ、驚いたことに、イギリスではビッグサイズの「TheCableBox」でも小さすぎると言われているんですよ(笑)。だからと言って、さらに大きなモデルを作るのは意味がないと思いますし、ビッグサイズとスモールサイズの「TheCableBox」とで、お互いに補完し合ってくれるのではないかと考えています。

スモールサイズのモデルには白と黒だけでなく、色々なカラーバリエーションを用意しました(今夏発売予定)。

ビッグサイズの製品カラーが白と黒だけだったのは、在庫管理の関係もありますが、たいていの場合、机の下やキャビネットの後ろなどに置かれて目に入ることが少ないためです。スモールサイズの「TheCableBox」は、机の上に置かれるキュートな製品ですから、もっと生き生きとしたカラーがあっても良いと思いました。

StudioDeskは伝統とモダンデザインの融合

普通のワークデスクやコンピュータデスクは金属や樹脂を多用したものが多いのに対し、「StudioDesk」は木で作りました。その理由を説明するには、まず、Sanctuaryを見ていただくのが良いでしょう。

「TheSanctuary」は充電ステーションですが、ランプ類も露出させず、外観からは電気的な要素が感じられないようにデザインされています。それは家の中で静かに使ってもらいたい製品だからです。そのためには、テクノロジーには隠れていて欲しいと思いました。

同じように「StudioDesk」も、オフィスと家の両方で使えるように考えたので、いかにもテクノロジー的な雰囲気よりも温かみを重視したのです。テクノロジーが大好きという人でも、度を超してしまうと、逆にそれをみづらい、殺風景なもの、感じるのではないでしょうか。

テクノロジーと良好な関係を保つためにも、「StudioDesk」にはより心地の良い素材を使いたかったのです。

スライドするブラックレザーのマット部分は交換可能で、将来的には他の素材のものもオプションのアクセサリとして用意するかもしれません。たとえば、Maharam社のファブリックなどを使うと、よりモダンな感覚になるはずです。

「StudioDesk」は、プリンタや備品を載せる棚や各種のアクセサリが所狭しと付いたようなコンピュータデスクとは違います。小さな部屋でも場所を取りすぎずに使え、かと言って狭すぎることもなく、ちょうど良い大きさです。

この天板の幅は、元々、ノートコンピュータを念頭に置いて決定しました。以前に、ノートコンピュータの販売数が史上初めてデスクトップコンピュータを抜いたという記事を読んで、これからはノートコンピュータの時代が来ることを確信したからです。

奥行きも、ノートコンピュータを使うときの自然な位置を割り出し、その直後にケーブル類を処理するためのスリットが来るようにして決めました。

天板の隅にケーブル用の穴をあけたコンピュータデスクも見かけるのですが、結局、好きな位置で機器を使おうとすると、そこからケーブルを伸ばして机の上を這わせなければなりませんね。スリットならば、その心配がなくきれいに整理できます。

さらに、スリットの後ろにも、液晶ディスプレイが置けるくらいのスペースを設けています。ノートコンピュータユーザーであっても、外部ディスプレイをつなげて使う人も居ますから、その可能性を排除するようなことはしたくなかったからです。

私自身、ノートコンピュータを毎日持ち歩くので、「StudioDesk」のところに戻ったときにセッティングが容易なように、スライド式のカバーを設けました。いつも、机の下に潜り込んで作業したくはないですよね。

このスライド機構も、金属や樹脂のレールなどは使わずに実現したのですが、スムーズで気に入っています。動きが悪くなったら、少量のワセリンなどを塗れば良いのです。

それから、いくら机の上をきれいにできると言っても、中身まで構造的にし過ぎてしまうと、使う人が窮屈に感じるかもしれません。「TheCableBox」もそうですが、「StudioDesk」も内部は多少散らかっていても良いように考えました。自分自身も、そうしたいからです。

内部の手前の板が傾いているのは、座ったときに膝に当たらず、快適に使えるように配慮したものですが、同時に、平らな面と傾いた面の間に構造材を兼ねたパーティションがあるので、たとえば電源とハードディスクやデジタルカメラなどを分けて収納することもできます。

足を斜めにしたのは、ちょっとしたキャラクターを与えたかったのと、伝統的なおばあさんのキッチンテーブルのような雰囲気を盛り込みたかったためです。

ジャスパー・モリソンの影響もあるのかも知れませんが、私自身もそういうものが好きで、モダンなのに、どこかで見たような懐かしいディテールがひとひねりして入っているようにしました。

そのおかげで、すべての接合面が直角ではなくなったため、木材の加工をはじめとする製造工程は複雑です。そのシンプルさからは想像できないほど、手がかかっています。

天板はコストも考えてラミネート素材ですが、縁や脚にはインドネシア産のマホガニーの無垢材を使いました。ケーブルを通すスリットの内側も、製造工場からの提案で、やはり無垢材のブロックを挿入して、滑らかに削る処理にしました。とても素晴らしい仕上がりになったと思います。

Blueloungeというブランドとこれから

今後は、少なくとも年間4つの新製品を開発していく予定です。ただし、あまり長期に渡る計画は立てていません。というのは、吸盤を見て「coolfeet」を思いついたり、販売チャンネルのほうから「TheCableBox」のスモールサイズの要望があったり、「cable yoyo」を発展させてケーブルの処理を考えていったら「StudioDesk」に行き着いたりと、色々なところから製品のアイデアが出てくるからです。

また、「TheSanctuary」は、Blueloungeのベストセラー商品ですが、これの改良も続けていきます。

一方では、「CableDrop」のように、外部のデザイナーからの持ち込み企画も出てきました。これを発売したことで、Blueloungeは本当の意味でのブランドに成長したと思っています。

すべてを自分たちでデザインするのではなく、良いデザインのキュレーターとしても活動できるようになったということです。もちろん、デザイナーとしての私は、これからも常にベストなものを作っていきたいと考えています。

インタビューを終えて

ドミニクさんのインタビューで印象的だったのは、論理的で、かつ情熱にあふれた、彼の話しぶりです。

そこには、12歳の時から目指してきた仕事に就くことができた幸運を喜びながらも、地に足を付けて、人々の心の状態を変えられるようなデザインを少しずつでも世に送り出していこうとする、確かな意志が感じられました。

決して奢らず、しかし自らのデザインを熱く語る様子は、同じイギリス系のデザイナーであるアップル社のデザインディレクター、ジョナサン・アイブにも通じるものがあります。

アシストオンでは、Blueloungeの初期の製品から扱ってきましたが、改めてその発想の秘密に納得したり、これからも引き継がれていく製品哲学に触れることができ、今後の新製品への期待も一層高まりました。



インタビュー AssistOnテクノロジーライター 大谷和利 2009.4.21



"Everything should be made as simple as possible, but not simpler."

「すべてのものを、それ以上できないほど、シンプルに」 これがBlueLounge(ブルーラウンジ)の目指していること。

1999年、創設者でありデザイナーであるドミニク・シモンズとメリッサ・サンジャヤと共にロサンゼルスで設立。彼らが創り出すものは家具、靴、メガネ、そしてかゆいところに手の届くアクセサリーなど、多岐にわたります。そして、その考え抜かれたデザインによって、私たちの身の回りにある小さな問題の解決策を提案し、可能な限りシンプルな製品作りへの努力を続けています。


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掲載した写真、およびインタビューテキストはAssistOnが独自に撮影、製作したもの、もしくはBluelounge社ならびにトリニティーから特別に許可を取得し掲載しています。無断転載を禁じます。

about inFocus

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inFocus は、展示会やwebによる情報発信を通じ、いま、まさに旬のさまざまなデザインにAssistOn独自の視点でフォーカスするシリーズです。どうぞご期待ください。