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2008年1月10日、デザイナーと共同で、紙を加工したモノの可能性を追求するブランド「かみの工作所」の展示会をアシストオンで開催するにあたり、製品を生み出している現場である、福永紙工株式会社をたずねました。
福永紙工の社長、山田明良さんは、以前はアパレル会社にいらした経験もあり、デザインへの関心も高く、工場の社長といっても40代半ばの若い社長です。「かみの工作所」がスタートしてからは、デザイナーの方々から「困ったときの山田社長」と言われるほど、頼りにされる存在となっています。
福永紙工は立川駅から徒歩20分ほどのところにあり、冬の高く澄んだ青空の下、遠くに望む山々を見ながら向かって行くと、工場の大きな三角屋根が見えてきます。入り口には、大きな紙の束がいくつも壁のように積み上げられ、すぐに印刷や紙を扱う工場であることが分かりました。
働く方々とすれ違うた度に「いらっしゃいませ」の明るい声に出迎えられ、工場内に一歩足を踏み入れると、カシャン、カシャンと印刷機や裁断機のリズムよい音が聴こえ、インクの匂いで、学校の美術室や図書館にいるような懐かしい気分になります。
早めに着いた私たちを、社長の山田明良さんが、にこやかに迎えてくださり、工場のことや「かみの工作所」についてお話をうかがいました。
福永紙工のしごと
福永紙工は1963年(昭和38年)東京都立川市に創業し、今年で46年になる印刷や紙の加工をおこなう会社で、元々は段ボール屋さんだったんです。先代の社長(現、会長の福永秀夫氏)が創業し、東京の多摩地域を中心に、地元企業の会社案内やお菓子屋さんの化粧箱など、20年来のお客様と信頼関係を築きながら、着実に取り組んできました。
通常、印刷の業界では、印刷や紙加工は工程ごとに何社にも渡って分業されますが、福永紙工では、このひとつ屋根の下でおこなえます。印刷から紙の加工、パッケージの組み立て、納品までを一貫しておこなえるんですね。そうすることで、スケジュールや品質のコントロールできますし、コストも抑えられるのです。
現在では、地元企業だけではなく、大手企業の名刺やパンフレット等の大量の印刷もおこなっています。平面に仕上げるものだけではなく、美しい仕上げが求められるお菓子の化粧箱をはじめとした、製品パッケージの製作は得意ですね。
特に「Gフルート段ボール」(マイクロフルート)と呼ばれる、極薄の段ボールの印刷技術に関しては自信があります。
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「Gフルート段ボール」の印刷について説明しますと、普通、薄い段ボールで製作する場合、直接印刷してしまうと、段ボール構造の波になっている部分が潰れてしまいます。
そのため、いったん、薄い紙に印刷したものを、後から段ボールに貼り合わせて仕上げます。ところが、うちでは極薄の段ボールでも、そのまま印刷がかけられるんですね。ですから、貼り合わせる手間もコストも抑えることができるのです。
決して特殊な機械を使っている訳でもないんですが、他の会社では引き受けないようなことでも、依頼主やデザイナーの要望に応えるようにしています。職人の技術もあるからこそできることなんですが、私たちは価格だけで左右される仕事ではなく、質の高い仕事をしていきたいんです。
印刷業界は製紙メーカーや広告代理店、印刷会社といった大手企業が数社あって、その下に実際に印刷や紙加工をおこなう、我々のような中小規模の企業がほとんどです。製作物が発注されてから出来上がるまでには、作業工程ごとに、何社も何社も経ていくため、非常に無駄が生じやすい多い業界なんです。
そうすると、仕事の品質ということよりも、仕事を取るための価格競争になってきてしまうんですね。僕はそこには参加したくないですし、先代がお客様を大切にしてやってきたことを、これからもやっていきたいのです。
かみの工作所のはじまり
価格競争の厳しい印刷業界の中で、他社との差別化や独自性を出していくにはどうしたらいいのか、日頃から考えていました。
そんなとき、たまたま自宅の近所にあった、ちょっと変わった文房具屋さんに入ってみたんです。普通の文房具屋さんとは違い、デザイナーが作った製品を売っていたり、展示会をおこなっていたりと、以前から気になるお店でした。それが「つくし文具店」でした。
お店に入ってみると、店主の方がいらっしゃって、いろいろとお話をすることができました。僕の会社が印刷や紙の加工を一貫しておこなっていること、加工技術を活かした新しい取り組みをしたいこと。会ったばかりの店主にいろいろ話を聞いていただいたら、とても関心をもってくださった。その店主がデザインデレクターの萩原修さんだった、というわけです。
萩原さんは展示会や商品、本の企画やプロデュースを行いながら、かつてお母様が営んでおられた文具店を引き継いでおられた。たまたま私が訪ねたその日には、その「つくし文具店」の店頭に立っておられた、というわけです。この出会いが「かみの工作所」を立ち上げることになった、最初のきっかけ、2006年の春先のことです。
ちょうどこの出会いの少し前には、萩原さんが関わっている「国立デザインセンター」が立ち上がったばかりでした。「国立デザインセンター」は、東京都の国立を拠点とするデザイン活動体です。建築家、グラフィックデザイナー、プロダクトデザイナーといったデザイナーやクリエイターだけの集まりではなく、地元企業と一緒にものづくりをしていくことを目指していたんですね。
そこで、デザイナーと企業つなぐプロジェクトの第一段として、「国立デザインセンター」のメンバーでもあるデザイナーの三星安澄さんがディレクターとして加わり、2006年4月に紙を加工したモノの可能性を追求するブランド「かみの工作所」が福永紙工から誕生させました。
かみの工作所でのしごと
まずはじめに「かみの工作所」では、どんな技術で、どんなことができるのか、知ってもらうための営業ツール「BUSSINES PACK」を作りました。
これは紙をカットしたり、穴を空けたりするだけではなく、表面にスジを付ける「スジ押し」、凹凸をつける「エンボス加工」、お菓子箱の開封などで良く見かける「ジッパー加工」など、紙の加工見本を兼ねたものにしました。出来上がった「BUSSINES PACK」はさっそく、それらのニーズがあると思われた企業へ向けて送ってみました。しかし残念なことに注文に繋がるような反響は全くなかったのです。
ところが、実際にデザインやものを作っていくデザイナーたちに見せたところ、皆さんとても驚かれ、興味津々でで手に取ってくれたのです。
そこでさっそく方向転換して、うちの技術を知ってもらうために、デザイナーの方々を集めて工場を案内してまわることにしました。また「国立デザインセンター」のプロジェクトや展覧会などとも連携して、積極的に参加することにしました。
そうしたいきさつを経て、2007年6月には「つくし文具店」の開店2周年記念イベントとして「かみの道具展」を開催し、ここではじめて「かみの工作所」のオリジナル製品をお披露目することになりました。
アシストオンで今回、展示販売するものは、この時のオリジナル製品をもとにして、さらにスケールアップしたものです。どのアイテムも細部に渡ってクオリティーをアップさせ、新たなデザイナーにも参加していただきました。
かみの工作所の現場とクオリティー
一般的にはデザイナーのみなさんが印刷所や紙の加工の現場に来られることは、たいへん少ないようです。しかし、「かみの工作所」の仕事では、デザイナーさんにこの工場に来てもらって、現場で見ながら仕上がりを確認してもらうことにしています。
特に印刷の色については、デザイナーさんの指定通りの色で印刷しても、実際に印刷する紙の色や質感、光の反射などによって、見え方が微妙に変わってくることが良くあります。その場合、デザイナーさんがイメージするものに合わせてインクを調合し、試し刷りしたものを、すぐその場で確認してもらいます。
現場で確認しているから、意思の疎通ができますし、お互いに作業もスムーズです。結果、仕上がりのいいものができる。デザイナーさんと現場で作業をする職人が一緒になれるのも、「紙の工作所」があまり他では例を見ない、印刷から納品までを一貫して行っている強みといえるでしょう。
デザイナーからの要望には、手間が掛かるようなこと、これまでに無いようなこと、むずかしそうなことなど、様々あります。
しかし私たちはなるべく「出来ない」とは言いたくない。諦めたくないんです。いいものを作らないと、デザイナーさんも張り合いがないと思うのです。それに、次も「かみの工作所」と作りたいと思っていただけないでしょう。だから、デザイナーさんの要望には応えていきたいんです。
デザイナーさんからの難解な要望に、最初は職人たちも戸惑うこともありました。しかし、職人気質もありますし、色々と工夫して、最終的には仕上げます。若いスタッフから熟練の職人まで、皆で協力して、いいものを作り上げてくれます。
このような経験を重ねるうち、今では紙の工作所のオリジナル製品の製作だけでなく、デザイナーさんが個々に関わっている仕事の製作を私たちのところで制作したい、と指名していただけるようになってきました。今では製品パッケージやダイレクトメールなど、様々なカタチで実を結びつつあります。これからも工場見学の機会も増やして積極てな取り組みを続けていきます。
インタビューを終えて
今回、印刷と紙の加工を行なう福永紙工さんの工場にお邪魔させていただきました。工場というと殺伐としたイメージを持たれる方も多いと思いますが、工場内は整理整頓され、そこで働くスタッフや職人さんたちがいきいきと働く姿が印象的でした。
「今は、デザイナーとの信頼関係も築きながら、ひとつひとつ、いいものを作っていきたい」という山田明良さん。かみの工作所のことや職人さんたちのことを話す時の優しく、嬉しそうな笑顔が記憶に残りました。今後も、デザイナーからの新たな要望に、「かみの工作所」として、どう応えていくのか。新たにから誕生するモノはどんなものになるのか、今後の展開に期待が高まります。
アシストオンでは、2月15日から2月28日まで、8組のデザイナーによる、暮らしや仕事や遊びなどで使う「かみの道具」を提案する展覧会「かみの工作展」を開催します。
アシストオンでも縁のあるデザイナーをはじめ、8組のデザイナーによる、さまざまな紙の加工を活かした製品が並びます。店頭では、紙の加工についての紹介や、かみの工作所で生まれた製品を実際に手に取り、お買い求めいただくことができます。
折ったり、切ったり、曲げたり、穴を空けたり...
だれにでも身近にある紙を、デザイナーの新しい発想で、どんなモノができるのか。この機会に、その可能性の一端を見てください。
インタビュー AssistOn企画・広報部 斉藤有紀/豊川梨花 2008.1.10
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